シルバーの燻し仕上げ

燻し仕上げ(古美仕上げ)は銀製品の表面を硫化させたり、塩化させて感光により
黒みを生んで古びた味わいを持たせる技法です。               
硫化には六-〇ハップ(むとーはっぷ=家庭用温泉の元として薬局などで市販)や
火薬(花火などの燃え殻)に含まれる硫黄を塗布あるいは浸して硫化銀を得る方法が
あり、塩化には塩化金を用いる方法や塩素蒸気にさらす方法などが有ります。  
ここでは一般の家庭でも可能な方法として、六-〇ハップを使ってプロ級の仕上げを
得る方法を紹介しましょう。                        

シルバーの燻し 今回の説明のために東京都武蔵村山市の革工芸「クーデルカ・レザー」さんご依頼のシルバーボタンを使わせていただきました。

(鈴木大輔さん、有り難うございます)
鋳造されたボタンをバレル研磨し終えたところ。まだ湯口が付いています。
シルバーの燻し 湯口を落として、磨きます。燻し加工の場合はバフによる研磨は後にも先にもここ一回だけなので、丁寧に磨いていきます。
シルバーの燻し バフ研摩で奇麗に磨き終わったところ。このときに鋳造の際のスや、ワックスの気泡によるへこみなどをチェック。修整できるものは修整、出来ないものは弾きます(そのために必要個数より一割程度多めに鋳造してあります)。 シルバーの燻し いよいよ六-〇ハップを使った「燻し」に掛かります。六-〇ハップの燻しは安全で手軽なのがメリットですが、他の方法に比べるとやや硫化膜が剥がれやすいのが欠点です。特に今回のボタンのように文字の中だけを黒く残すような場合、硫化させた後の仕上げ作業でせっかくの硫化膜まで取れてしまうことがあります。歯ブラシにつけた六-〇ハップをボタンの燻す面に塗り付け(少量で充分)すぐにティッシュなどで拭き取るのがコツです。
シルバーの燻し 六-〇ハップを塗ってからティッシュで拭き取ったボタンを、今度はピンセットで持って裏側からアルコールランプで熱します。熱し過ぎると硫化膜も焼けてなくなってしまうので、色の変化を見ながら墨のような黒みが出たら、すぐに火から離して冷まします。熱いまま乗せておいても大丈夫なセラミックや金属のボードを用意しておくと便利です。 シルバーの燻し 燻す前(手前)と燻した後の真っ黒になったボタン。燻す前のものも硫化が始まって茶色くなっています。
シルバーの燻し 真っ黒に硫化したボタンを樹脂などの容器に移し、水と重曹(少量)を入れてすすぎ洗いします。これは硫化反応に使った六-〇ハップの硫黄分を除去するのに必要な作業です。水洗いの後、良く水分を取ってから、布にシルバー磨きなどの金属磨きを少量付けて、これで黒みをこすり落とすと同時に光沢を出します。アルコールランプで熱する前に六-〇ハップを拭き取っているので、簡単に黒みを落とすことが出来ます。 <ポイント>
燻しの際、加熱する前(六-〇ハップが乾かないうちに)に拭き取ること。燻し終わったら重曹を溶かした水で、良く洗うこと。これをしないと、せっかく磨いてもすぐに硫化が進んで茶色く変色することになります。また金属の容器を使うと(化学的な詳しい根拠は調べていませんが、体験として)金属間の電位差から電流が生じてメッキか電解のような効果で、硫化膜の黒みが無くなってしまいます。